2012.1.30

担任コラム

 園庭でせっせと飛び回っていた蜜蜂たちも巣箱の中で過ごし、鯉の池には氷がはる中、桜のつぼみは日々膨らみ、季節が春に向かっていることを感じます。

 朝、男の子たちは友達が集まると「せーの」と声を掛け合い机を持ち上げ、用意しておいた4脚の椅子をすばやくいれて、二階建ての船作りを始めます。「僕が椅子を持ってくるから板を持ってきて!」「オッケー」と仲間同士で役割分担をして材料を集めます。椅子を1メートルほど離して向かい合わせ、そこに板を渡し、カーペットを敷き、お人形の枕を人数分並べてみんなで寝られるベッドを作り、ついたてで壁や屋根、操縦席などを作り、旅に出かけます。そのとなりでは、女の子たちがおうちごっこを始め、テーブルに布を敷き、丸い籠を裏返して柔らかなコットンを巻いてケーキのスポンジを作り、そこに紐の生クリームにくるみのいちご、洗濯バサミを縦に挟んでロウソクにし、一緒に住んでいる友達の数を数え、お皿を並べてお誕生日の準備が進められます。

 その家の中では、人形劇の支度をしている子どもたちもいて、真っ白なシルクが敷かれた舞台で、‘藤色さん’役の小人人形を動かし、雪山に遊びにきたお話が始まり、気づけばクラス全員集まっていました。楽しそうな様子を見て突然自分も参加したくなった桃色さんがうさぎを舞台で動かすと、「すると、うさぎさんが遊びにきました」と藤色さんが自然に輪の中に入れ、「どこからきたの?」と質問をして、桃色さんが答えられず布の中に人形を隠してしまうと「恥ずかしがり屋のうさぎさんは隠れてしまいました」と話して、また雪山散歩を続けます。しばらくすると一人の子どもがちょうど小人が入る窪みのある木をもってきて「ソリのプレゼントだよ」とクマの人形を動かし、「ありがとう」とソリ滑りが始まります。
 子どもたちは、「こんな話をしよう」と具体的に決めているわけではなく、心の中に印象として残っていた雪山を舞台に作り、人形を動かして散歩をしているうちに話を考えたり、きっかけから新しいことを思いつき物語を作っていきます。そして、皆のアイディアが加わりながらいつまでも劇を楽しんでいました。

 三学期を迎えた空組のお部屋では、子ども同士の仲が深まりを増し、個々に好きなことをしながら同じ空間にいる遊び方から、同じイメージをもって協力して遊ぶ姿に変化してきたように感じます。また大人の手助けがなくてもちいさなぶつかり合いやすれ違いを自分たちで解決できる事が増え、担任は、出来上がり始めた年長児の織り機の生地を、ポシェットや小物入れになるよう縫ったりしながら遊びを見守っています。

 こうして子どもたちだけで穏やかに遊ぶことができているのは、4 月から、「相手の気持ちを考えてみる」、「自分の感情を言葉で伝える」ということを投げ出さず、悔しさを感じたり、頑なだった気持ちを譲ったり、相手を許したりしながら、皆で気持ちよく過ごすために、子どもたちが知恵を絞り一生懸命向き合ってきた賜物だと感じています。「友だちと仲良くする」「相手の気持ちを考える」ということを道徳的に学ぶのではなく、身をもって体験し感覚として体得したことが活きていると感じます。遊びの中から育んだこの感覚はきっと、これからの様々な出会いの中で楽しいことを一層楽しめるような力になることでしょう。遊んで学ぶ子どもたちの日々の成長に胸がわくわくします。

空組担任 今井 奈津子

2012年1月30日

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